歌垣
 歌垣(かがい)というのは、山野河海などの霊的な場所に村の老若男女が集まり、夜を徹して歌の掛合いをすることです。まあ、それだけならば、今のカラオケ大会と変わらないでしょう。しかし歌垣は、年に一度のお祭りとして、性の解放が共同体社会の中で許されていたものだったのです。
 歌垣には未婚の男女はもちろん、既婚の男女も参加できましたが、だからといって、乱交やフリーセックスというような性格のものではありません。歌垣はもともと五穀豊穣を祈願する神事であり、セックスもまた神聖な行為として捉えられていたからです。歌垣の一夜は、恋人として結ばれることができる神から与えられた時間であり、朝になればその恋人とも別れなければなりませんでした。それは日常から非日常、そして日常へと再生産される過程だったわけです。
 歌垣に限らず、夜祭りや盆踊りの日は、かつてはどこの村でも性の解放日になっていました。これを羨ましく思うか、思わないかはみなさん次第です。ただ、ひとつ言えることは、ほかに楽しみのない農村において、性の解放が一年間の疲れを吹き飛ばす唯一の楽しみになっていたことは間違いありません。一晩の無礼講で気分を一新し、また一年を頑張ろうと思えたのではないでしょうか。
 今ではこうした風習もほとんど無くなってしまっていますが、若い人たちのガス抜きはどこかで必要だというように思います。ワールドカップで盛り上がって夜通し楽しむ。それは現代の歌垣といえるのではないでしょうか。

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